注法華経・断簡

【　日蓮所持の「注法華経」について　】

「私集最要文注法華経＝略して注法華経・十巻」は法華経八巻、無量義経一巻、仏説観普賢菩薩行法経一巻の本経行間、紙背に経釈の要文を注記したもの。

使用された法華三部経板本は春日板(平安時代末期、奈良興福寺から木版で出版されたもの)系統の無刊記の巻刷本、書体等の外見は南都四恩院・心性の開板になる法華経板本に酷似する。

表裏に注記された経論釈は2107章であり、内3章は日興筆と推測される。日蓮自身の解釈は紙上には記されていない。

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵

三島市　注法華経

【　日蓮が注記を行った年代の推測　】

「本化別頭仏祖統記巻三」

1252年・建長4年

「高祖年譜」「高祖紀年録巻二」「高祖累歳録巻一」「日蓮聖人伝十講」

1255年・建長7年

「元祖化導記」「日蓮聖人註画讃」「法華霊場記」「別頭高祖伝」

撰集年代は伝えず

「日蓮宗年表」

1274年・文永11年頃

立正安国会　片岡随喜氏

筆跡より推考すれば身延入山以降の注記

稲田海素氏

同

山中喜八氏

(筆跡は)立宗前後の注記とは拝し難い

注法華経の筆跡は、早いもので1272年・文永9年、遅いもので1278年・弘安初年であり、大半は1274年・文永11年から1277年・建治3年に亘る期間のものと推定。

＊注法華経に関する考察

・「法華仏教研究」24号　川﨑弘志氏の論考「日蓮聖人の生涯と遺文の考察(六)」

【　経典類　】

浄土教関係の典籍

大阿弥陀経一章、観無量寿経二章、観経義疏一章、同正観記一章、浄土群疑論一章、往生捨因一章の計七章。

密教関係の経釈

大日経五章、金剛頂経一章、蘇悉地経一章、瑜祇経一章、分別聖位経一章、不空羂索神変真言経一章、方等陀羅尼経一章、威儀形色経一章、観智儀軌一章、一字金輪時処儀軌一章、法華肝心陀羅尼一章、大日経義釈三章、大日経疏三章、金剛頂義訣一章、顕密二経論七章、秘蔵宝鑰一章、法華十不同一章、蘇悉地経疏二章、大日経指帰三章、講演法華儀一章、真言宗教時義七章、菩提心義八章等、計五十二章。

日蓮の密教批判は主に佐渡以降に展開されており、化導の次第との関連よりすれば、密教関連の典籍が多く記される注法華経は、やはり佐渡以降の撰集と推測されるか。

【　金綱集　】

日蓮一弟子の一人、日向が日蓮より聴聞し、また見聞きしたところにより諸宗破立の大綱を記述、広く経論疏釈を援引したことにより大成した、と伝えられる「金綱集」の引用経釈には、注法華経の注記と同文のものが多い。

断簡

※1～200は全て昭和定本3巻

1　建治　12行　

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2477)

校64・P2648

2　文永末　2行　

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2477)

校61・P2647

3　建治　1行

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2477)

校63・P2647

4　建治　1行

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2478)

校62・P2647

5　弘安　1行

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2478)

校66・P2649

6　弘安　1行

千葉県鴨川市小湊　誕生寺蔵(定P2478)

校65・P2648

7　文永・建治の頃　3行

千葉県茂原市茂原　藻原寺蔵(定P2478)

校53・P2644

8　文永・建治の頃　8行

千葉県茂原市茂原　藻原寺蔵(定P2479)

校52・P2643

9　建治　5行

千葉県千葉市緑区土気町　本寿寺蔵(定P2479)

校40・P2635

10　文永　2行

千葉県千葉市緑区土気町　本寿寺蔵(定P2479)

校39・P2635

11　弘安　4行

千葉県茂原市本納　蓮福寺蔵(定P2480)

校51・P2643

12　文永・建治　2行

千葉県香取郡多古町南中　(峯)妙興寺蔵(定P2480)

校59・P2646

＊近隣の日本寺は元・中村檀林

13　弘安、2行　

千葉県匝瑳(そうさし)市内山　妙広寺蔵(定P2480)

校58・P2646

14　弘安　1行　

千葉県匝瑳市入山崎　金蓮寺蔵(定P2480)

校57・P2645

15　弘安　2行

千葉県匝瑳市飯高　飯高(はんこう)寺[元・飯高檀林]蔵(定P2480)

校56・P2645

16　建治　第5紙

千葉県佐倉市岩富　長福寺蔵(定P2481)

校54・P2644

17　弘安　第4紙3行

千葉県千葉市若葉区野呂町　妙興寺[元・野呂檀林]蔵(定P2481)

校38・P2634

18　弘安　3行　

千葉県千葉市若葉区野呂町　妙興寺蔵(定P2481)

校37・P2634

19　文永5年4月　2紙、第1紙15行、第2紙15行

千葉県市川市中山　法華経寺蔵(定P2481)

安国論御勘由来草案「正嘉元年御書一巻」(祐録)

校42・P2636

20　建治　1行半　

千葉県松戸市平賀　本土寺蔵(定P2483)

校49・P2642

21　不明　4行　

東京都墨田区向島　常泉寺蔵(定P2483)

校23・P2628「常泉寺曽存」

22　不明　第3紙初行

東京都墨田区向島　常泉寺蔵(定P2483)

校22・P2628「常泉寺曽存」

23　不明　2行

東京都豊島区南池袋　常在寺蔵(定P2483)

校24・P2629

24　文永　2行

東京都杉並区堀之内　妙法寺蔵(定P2484)

校81・P2654

25　文永　2行

東京都杉並区堀之内　妙法寺蔵(定P2484)

校80・P2653

26　建治　第10紙初2行

東京都杉並区堀之内　妙法寺蔵(定P2484)

校83・P2654

27　弘安後期　南条氏へ　3行

東京都杉並区堀之内　妙法寺蔵(定P2484)

校82・P2654

28　弘安　1行

東京都港区白金　覚林寺蔵(定P2485)

校71・P2650

29　建治　第9紙初行

東京都港区高輪　某家蔵(定P2485)

校73・P2651

30　文永の初頃　1紙17行

東京都大田区池上　池上本門寺蔵(定P2485)

31　弘安　第6紙初4行

東京都大田区池上　池上本門寺蔵(定P2486)

校77・P2652

32　弘安　4行

東京都大田区池上　池上本門寺蔵(定P2486)

校79・P2653

33　文永後期　2行

東京都大田区池上　池上本門寺蔵(定P2486)

校76・P2652

34　建治　8行

横浜市中区長者町　某家蔵(定P2486)

校87・P2656

35　文永中期　1紙10行

神奈川県鎌倉市大町　比企谷妙本寺蔵(定P2487)

校91・P2657

縮二続121

36　弘安　2行

神奈川県鎌倉市大町　比企谷妙本寺蔵(定P2487)

校94・P2659

37　弘安　第10紙4行

神奈川県鎌倉市大町　比企谷妙本寺蔵(定P2487)

校95・P2659

縮二続122

38　弘安　第1紙3行及端書12行

神奈川県鎌倉市大町　比企谷妙本寺蔵(定P2488)

校93・P2659「建治」

縮二続122

39　文永末　4行1字

神奈川県鎌倉市　本化妙宗連盟蔵(定P2488)

校「良観不雨御書」(校1-176・P941、新P805)

＊創価学会新版「良観不下一雨御書(りょうかんふげいちうごしょ)」

(創新427・P2148)

＊本文

人、二百五十戒の諸僧数十万人を集め、八万法蔵を読むと雖も、何ぞ一雨(いちう)も下(ふ)らざる。龍王(りゅうおう)の慳貪(けんどん)か、諸仏の妄語か。良観上人、身(しん)・口(く)は仏弟子に似ると雖(いえど)も、心は一闡提人(いっせんだいにん)たるか。

40　弘安　2行

神奈川県平塚市平塚　要法寺蔵(定P2488)

校89・P2657

41　弘安　2行

栃木県佐野市大町　妙音寺蔵(定P2488)

校34・P2633「第8紙2行」

42　弘安　1紙4行　

栃木県下野市小金井　蓮行寺蔵(定P2489)

校25・P2629

43　建治　第8紙2行

茨城県水戸市加倉井　妙徳寺蔵(定P2489)

校32・P2632

44　建治元年　2行

茨城県水戸市加倉井　妙徳寺蔵(定P2489)

「法蓮抄」(定1-175・P942)断片

45　弘安　2行

茨城県潮来市築地　妙光寺蔵(定P2489)

校33・P2633

46　弘安　4行

福島県いわき市平　大宝寺蔵(定P2490)

校31・P2632

47　文永末　3行

福島県いわき市平　大宝寺蔵(定P2490)

校30・P2632

48　弘安　1行

青森県黒石市京町　妙経寺蔵(定P2490)

校29・P2631

49　建治　3行

北海道松前郡松前町豊岡　法華寺蔵(定P2490)

校28・P2631

50　文永中期　3紙(三段貼一幅)、第4紙19行、第6紙?18行、第7紙?18行

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵(定P2491～2493)

校144・P2680

51　文永中期　2紙(二段貼一幅)、1紙16行、1紙18行半

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵(定P2493～2494)

校146・P2683

＊創価学会新版「依法不依人の事」

(創新426・P2146)

創価学会新版では、昭和定本・断簡51と52の一部を合わせて「依法不依人の事」とする。

52　文永中期　3紙(三段貼一幅)、1紙17行半、1紙19行、1紙19行半

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵(定P2494～2496)

校145・P2682(定・断簡52の一部)

53　文永初期　1紙10行

京都府京都市上京区寺之内通大宮東入ル妙蓮寺前町　妙蓮寺蔵(定P2496)

＊断簡163と重複

＊平成校定は、愛知県名古屋市西区那古野・円頓寺(えんどうじ)蔵の「定・断簡92」(1紙10行)を前文として断簡「定・断簡53=163」に合わせて断簡2紙とし、(校1-175・P940釈迦御所領御書)とする。

＊創価学会新版「釈迦御所領御書(しゃかごしょりょうごしょ)」

(創新417・P2139)

創価学会新版は断簡92の「王これをもちゐず」から「今此の三界は皆」を前半、断簡53の「是我が有(う)なり、其の中の衆生は悉(ことごと)く是吾(わ)が子なり」から「又山王」を後半として一本化し、「釈迦御所領御書」とする。

＊全集「釈迦御所領御書」(全P1297)

＊本文

王これをもちゐず。仏、地神・天神を証人として論じか(勝)たせ給ひたりき。さればこの世界は我等が本師・釈迦如来の御所領なり。されば四衆ともに仏弟子なれども、優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)は仏弟子なれども外道にもに(似)たり。比丘(びく)・比丘尼(びくに)は仏の真子(しんし)なり。されば大悲経には大梵天・第六天・帝釈・四大天王・人王等を天にめして、三千大千世界を次第にゆづ(譲)り給ひて云く　この世界を領知して、我が真子、比丘・比丘尼を供養すべき由をとき給ひき。爾時(そのとき)、梵天・帝釈等仰(あお)ひで仰(おお)せに随ひにき。

又仏、正直捨方便の法華経の譬諭品に云く「今此の三界は皆是我が有(う)なり、其の中の衆生は悉(ことごと)く是吾(わ)が子なり」等云云。此の文のごとくならば、この三界は皆釈迦如来の御所領なり。寿量品に云く「我常に此の娑婆世界に在り」等云云。この文のごとくならば、乃往(ないおう・遠い昔)過去五百塵点劫よりこのかた、この娑婆世界は釈迦如来の御進退の国土なり。其の上、仏滅後一百年に阿育大王(あいくだいおう・アショーカ王)と申す王をはしき。此の南閻浮提を三度まで僧に付嘱し給ひき。又此の南閻浮提の内、大日本国をば尸那国(しなこく)の南岳大師、此の国に上宮太子(じょうぐうたいし)と生まれてこの国の主となり給ひき。しかれば聖徳太子已後の諸王は皆南岳大師の末葉(まつよう)なり。桓武天皇已下(いげ)の諸王は又山王(さんのう)。

54　建治　3紙、第7紙15行(上段貼)、第8紙15行(下段貼)、第10紙15行(一紙貼)

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵(二紙一幅・一紙幅) (定P2497～2498)

校148・P2685

55　弘安　3紙、1紙15行(下段貼)、1紙1行(上段貼の右)、1紙15行(上段貼)

静岡県三島市玉沢　妙法華寺蔵(二段貼一幅) (定P2498～2499)

校147・P2684

56　文永・建治の頃　4行

静岡県三島市泉町　本覚寺蔵(定P2499)

校149・P2687

57　正元頃　1紙13行

静岡県沼津市下河原町　妙覚寺蔵(定P2499～2500)

＊創価学会新版「法然大罪御書」

(創新419・P2140)

＊校140・P2678

＊本文

彼の浅経の読誦等の句に華厳・方等・般若等をい(入)るゝだにも不思議なるに、後八年の大法法華・涅槃・大日経等をば通じて入れて上品・上生の往生の業とするだにも不思議なるに、あまつさえ称名念仏に対して「法華経等の読誦は無間等の往生也」なんど申して日本国中の上下万人を五十余年が程、謗法の者となして無間大城に堕しぬる罪はいくら程とかをぼす。先づ法然が亀鏡にさゝげたりし双巻経・本願の文には「唯除五逆誹謗正法」と法蔵比丘いましめをかねてなし、正直捨方便の法華経には「若人不信毀謗乃至其人命終入阿鼻獄」と記しをかれたり

58　文永初　7行

静岡県沼津市下河原町　妙覚寺蔵(定P2500)

校139・P2678

59　文永末　2行

静岡県静岡市清水区興津本町　耀海寺蔵(定P2500)

校148・P2687

60　文永初　2行

静岡県静岡市清水区村松　海長寺蔵(定P2500)

校143・P2680

61　文永　1行

静岡県静岡市葵区駒形通　感応寺蔵(定P2501)

校136・P2677

62　建治　1紙

静岡県静岡市葵区沓谷　(貞松・みまつ)蓮永寺蔵(定P2501)

校148・P2687

63　弘安　第3紙3行

静岡県静岡市葵区沓谷　(貞松)蓮永寺蔵(定P2501)

校134・P2676

64　弘安　5行半

静岡県静岡市葵区沓谷　(貞松)蓮永寺蔵(定P2502)

校135・P2676

65　文永・建治の頃　上書

静岡県富士市岩本　実相寺蔵(定P2502)

校165・P2696

66　弘安　7行

静岡県富士宮市野中　大泉寺蔵(定P2502)

67　建治　2行

静岡県富士宮市北山　法華本門寺根源蔵(定P2502)

校152・P2690

68　文永中期　1行

静岡県富士宮市北山　法華本門寺根源蔵(定P2503)

校151・P2689

69　弘安　1行

静岡県富士宮市北山　法華本門寺根源蔵(定P2503)

校153・P2690

70　弘安　1紙12行

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2503)

284　弘安　第2紙後半12行、70(上記)の下に連文(定P2966)

(但第1紙12行「三論宗・・・高市郡」第2紙15行「久米道場・・・太子云謂恵慈法師・・・相違如何)(石写)

＊校「三論宗御書」(校2-326・P1614、全P691、新P1273)

弘安元年　2紙27行　大石寺蔵

縮続197

＊創価学会新版「三論宗御書」(創新433・P2152)

＊本文

三論宗の始めて日本に渡りしは、三十四代推古の御宇治(みよ・しろしめす)十年壬戌(みずのえいぬ)十月、百済(くだら)の僧・観勒(かんろく)之を渡す。日本記の太子伝を見るに、異義無し。但し三十七代の事、流布之始め也。

天台宗・律宗の渡る事は天平勝宝六年甲午(きのえうま)二月十六日丁未(ひのとひつじ)乃至四月入京、入東大寺。天台止観等云云。諸伝之に同じ。人王第四十六代孝謙天皇の御宇也。聖武は義謬(ぎ・あやま)れる也。書き直すべきか。戒壇は以て前に同じ。

大日経の日本に渡る事は、弘法の遺告(ゆいごう)に云く「件(くだん)の経王は大日本国(おおやまとのくに)の高市郡久米道場(たけちのこおりくめのどうじょう)の東塔(とうとう)の下に在り」云云。此れ又元正(げんしょう)天皇の御宇也。

法華経の渡り始めし事は人王第三十四代推古の四年也。「太子、恵慈法師(えじほっし)に謂(い)ひて曰く『法華経の中、此の句に落字あり』と」云云。太子、使(つかい)を漢土に遣(つか)はす已前(いぜん)に、法華経・此の国に有るか。推知するに、欽明の御宇に渡る所の経之中に法華経有る也。

但し自ら御不審の大事有り。所謂(いわゆる)、日本紀に云く「欽明天皇十三年壬申(みずのえさる)冬十月十三日辛酉(かのととり)、百済国の聖明王、始めて金銅(こんどう)の釈迦像一躯(いっく)を献ず」等云云。

善光寺流記(るき)に云く「阿弥陀仏竝(なら)びに観音・勢至、欽明天皇の御宇治天下(みよ・あめのした・しろしめす)十三年壬申(みずのえさる)十月十三日辛酉(かのととり)に百済国の明王より、件の仏菩薩を頂戴す」云云。相違如何。

71　弘安　1紙断、端書12行、本文9行

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2504)

＊創価学会新版「五大の許御書(ごだいのもとごしょ)」

(創新441・2159、校2-344・P1717、全P1599、新P1349)

校「五大のもとへ御書(五大の許御書)」

弘安元年　断簡1紙21行

＊本文

□等御尋ねあるべし。経は或は先後し、或は落経(らっきょう)にても候はず。

□りけるなり。なに事もかくの事□不沙汰あるか。

ものくる(物狂)わしきとはこれなり。法門もかしこ(賢)きやうにて候へばわる(悪)かるべし。

追申
五大のもとへは三□ども申し上げ候。他所に於て之を聞かしむ。将又(はたまた)、事に依て本の子細有るか。伯耆阿闍梨(ほうきあじゃり)の事は但(ただ)我(われ)□なるやう(様)なるべし。設(たと)ひ件(くだん)の人(ひと)見参(げんざん)を為すと雖(いえど)も、其の義を存じて候へ。

72　未詳　1紙断、第18紙11行　

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2504)

＊創価学会新版・平成校定「一定証伏御書(いちじょうしょうぶくごしょ)」

(創新439・P2158、校2-433・P1993、全P1598、新P1550)

弘安3年　第18紙12行

縮続144

＊本文

一定と証伏(しょうぶく)せられ候ひしかば、其の後の智人かず(数)をし(知)らず候へども、今に四百歳が間さで候なり。かるがゆへに今に日本国の寺々一万余、三千余の社々(やしろやしろ)、四十九億九万四千八百二十八人の一切衆生、皆彼の三大師の御弟子(みでし)となりて、「法華最第一」の経文、最第二・最第三とを(落)とされて候也。されども始めは失(とが)なきやうにて候へども、つゆつ(積)もりて大海となり、ちり(塵)つ(積)もりて大山となる。

73　4行　

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2505)

校「五眼御書」(校2-475・P2060、新P1674)

＊本文

天眼・慧眼・法眼なれども肉眼のごとし。法華経の行者は肉眼なれども天眼・慧眼・法眼・仏眼を備ふととかれて候。

74　3行

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2505)

校9・P2622

75　2行

静岡県富士宮市上条　大石寺蔵(定P2505)

76　文永初　2行

静岡県富士郡芝川町西山　富士山本門寺蔵(定P2505)

校159・P2693

77　建治　6行

静岡県富士郡芝川町西山　富士山本門寺蔵(定P2506)

校161・P2694

78　弘安　6行

静岡県富士郡芝川町西山　富士山本門寺蔵(定P2506)

校163・P2695

79　文永後期?　1紙14行

静岡県富士郡芝川町西山　富士山本門寺蔵(定P2506)

校162・P2695「建治」

80　文永　2行　

静岡県浜松市東区天龍川町　妙恩寺蔵(定P2507)

校138・P2677

81　文永初期　1行

静岡県浜松市東区天龍川町　妙恩寺蔵(定P2507)

校137・P2677

82　文永・建治交　5行　

山梨県南巨摩郡身延町身延　身延山久遠寺蔵(定P2507)

校122・P2672

83　弘安　2行

山梨県南巨摩郡身延町身延　身延山久遠寺蔵(定P2507)

校123・P2672

84　文永　第6紙4行

山梨県南巨摩郡身延町大野　本遠寺蔵(定P2508)

校124・P2673

85　建治　1行

山梨県南巨摩郡身延町下山　本国寺蔵(定P2508)

校125・P2673

86　文永末　3行

山梨県南巨摩郡増穂町小室　妙法寺蔵(定P2508)

校120・P2671

87　文永末　3行

山梨県南巨摩郡増穂町小室　妙法寺蔵(定P2508)

校281・P2742

＊山中喜八氏「断簡182と断簡87は同一の書」日蓮聖人真蹟の世界・下P62

88　文永末

山梨県南巨摩郡増穂町小室　妙法寺蔵(定P2509)

校121・P2672

89　弘安　3行

山梨県南アルプス市上市之瀬　妙了寺蔵(定P2509)

校127・P2674

90　弘安

長野県飯田市箕瀬町　長源寺蔵(定P2509)

校129・P2674

91　弘安　5行

愛知県岡崎市祐金町　善立寺蔵(定P2509)

校172・P2698

92　文永初　1紙10行

愛知県名古屋市西区　円頓寺(えんどうじ)蔵(定P2510)

＊山中喜八氏「断簡92と断簡163は同一の書」日蓮聖人真蹟の世界・下P62

＊平成校定は、定本断簡53=163、京都府京都市上京区妙蓮寺蔵(1紙10行)を後文として断簡2紙とし「釈迦御所領御書」(校1-175・P940、全P1297、新P804)とする。

＊創価学会新版「釈迦御所領御書(しゃかごしょりょうごしょ)」

(創新417・P2139)

創価学会新版は断簡92の「王これをもちゐず」から「今此の三界は皆」を前半、断簡53の「是我が有(う)なり、其の中の衆生は悉(ことごと)く是吾(わ)が子なり」から「又山王」を後半として一本化し、「釈迦御所領御書」とする。

＊全集「釈迦御所領御書」(全P1297)

＊本文

王これをもちゐず。仏、地神・天神を証人として論じか(勝)たせ給ひたりき。さればこの世界は我等が本師・釈迦如来の御所領なり。されば四衆ともに仏弟子なれども、優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)は仏弟子なれども外道にもに(似)たり。比丘(びく)・比丘尼(びくに)は仏の真子(しんし)なり。されば大悲経には大梵天・第六天・帝釈・四大天王・人王等を天にめして、三千大千世界を次第にゆづ(譲)り給ひて云く　この世界を領知して、我が真子、比丘・比丘尼を供養すべき由をとき給ひき。爾時(そのとき)、梵天・帝釈等仰(あお)ひで仰(おお)せに随ひにき。

又仏、正直捨方便の法華経の譬諭品に云く「今此の三界は皆是我が有(う)なり、其の中の衆生は悉(ことごと)く是吾(わ)が子なり」等云云。此の文のごとくならば、この三界は皆釈迦如来の御所領なり。寿量品に云く「我常に此の娑婆世界に在り」等云云。この文のごとくならば、乃往(ないおう・遠い昔)過去五百塵点劫よりこのかた、この娑婆世界は釈迦如来の御進退の国土なり。其の上、仏滅後一百年に阿育大王(あいくだいおう・アショーカ王)と申す王をはしき。此の南閻浮提を三度まで僧に付嘱し給ひき。又此の南閻浮提の内、大日本国をば尸那国(しなこく)の南岳大師、此の国に上宮太子(じょうぐうたいし)と生まれてこの国の主となり給ひき。しかれば聖徳太子已後の諸王は皆南岳大師の末葉(まつよう)なり。桓武天皇已下(いげ)の諸王は又山王(さんのう)。

93　弘安期　

岐阜県岐阜市矢島町　法華寺蔵(定P2510)

校132・P2675

94　弘安期

岐阜県岐阜市矢島町　法華寺蔵(定P2510)

校133・P2676

95　文永・建治頃　2行

岐阜県大垣市伝馬町　実相寺蔵(定P2511)

校131・P2675

96　弘安　1行

揖斐　蓮華寺蔵(定P2511)

97　弘安　1行

福井県越前市京町　妙国寺蔵(定P2511)

校113・P2669

98　弘安　1行

福井県越前市京町　妙国寺蔵(定P2511)

校113・P2669

99　文永中期　1行

福井県吉田郡永平寺町　某家蔵(定P2511)

校117・P2670

100　佐前　1行

福井県敦賀市元町　妙顕寺蔵(定P2512)

101　建治　2行

福井県敦賀市元町　妙顕寺蔵(定P2512)

校112・P2669

102　弘安　1行

石川県金沢市東山　長久寺蔵(定P2512)

校109・P2667

103　建治2年　第5紙初3行

石川県金沢市寺町　高岸寺蔵(定P2512)

「女人某御返事」(定1-99・P610)の末尾に接続

104　建治頃　1紙10行

石川県金沢市寺町　立像寺蔵(定P2512～2513)

105　佐前　1行(模写か)

新潟県新潟市秋葉区新津東島　(金津)妙蓮寺蔵(定P2513)

校99・P2664

106　佐前　1行

新潟県新潟市秋葉区新津東島　(金津)妙蓮寺蔵(定P2513)

校100・P2664

107　身延期　2紙2行

新潟県上越市寺町　(高田)常顕寺蔵(定P2513)

校103・P2665

108　弘安　2行(模本か)

新潟県上越市寺町　(高田)常顕寺蔵(定P2514)

校102・P2665

109　弘安　5行

新潟県村上市寺町　妙法寺蔵(定P2514)

校101・P2664

110　文永初期　2行

新潟県佐渡市五郎左衛門町　玉泉寺蔵(定P2514)

校104・P2665

111　文永　第8紙初2行

滋賀県守山市今宿町　本像寺蔵(定P2514)

校181・P2701

112　弘安　1行

滋賀県彦根市　法華寺蔵(定P2515)

＊興風談所は「滋賀県蓮華寺蔵、南条兵衛七郎殿御書の断片である」とする。

113　文永　第18紙初1行

滋賀県守山市今浜町　法華寺蔵(定P2515)

校178・P2700

114　文永末　第6紙初1行

三重県桑名市萱町　顕本寺蔵(定P2515)

校175・P2699

115　弘安　5行

三重県桑名市伝馬町　寿量寺蔵(定P2515)

校176・P2700

116　文永　1行

三重県津市岩田　仏眼寺蔵(定P2516)

校173・P2699

117　文永初期　2紙

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2516)

「安国論御勘由来草案?」第1紙9行、第2紙12行

＊本文

去る正嘉元年丁巳(ひのとみ)大地震、此の大瑞、日本日記に見ざるか。日蓮諸経を引き勘(かんが)ふるに、念仏宗と禅宗との邪法・此の国に出現し、存外に国中の上下、鎮護国家の為の大法を蔑如(べつじょ)せしむるに依り、法華・真言の国中の守護の大善神・瞋恚(しんに)を為し、悉(ことごと)く他国に向ふが故に、起す所の災難也。此の国・将(まさ)に他国に襲はるべし等云云。具(つぶ)さには故最明寺入道殿に奉る勘文の如し。谷土野禅門に之を尋ぬべし。

念仏者并(ならび)に檀那等、之を聞き怨(あだ)を成す。宛(あたか)も不軽菩薩の増上慢の四衆の如し。

⇒「法華・真言の国中の守護の大善神・瞋恚(しんに)を為し、悉(ことごと)く他国に向ふが故に、起す所の災難也」には注目。この文書を書いた時期の日蓮の思考は「法華真言並列」であり、東密批判開始の文永中期以前、即ち文永初期までの系年になると思う。

谷土野禅門は宿屋光則か。

118　弘安　7行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2516)

校203・P2710

119　弘安　5行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2517)

校202・P2710

120　文永初期　7行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2517)

＊創価学会新版「釈迦如来御書」(創新418・P2140)

＊校「釈迦如来御書」(校1-179・P945、全P1303、新P807)

縮続159

＊本文

釈迦仏にはすぐべからず。釈迦如来は正しく法華経に「悪世末法の時　能く是の経を持たん者は」等云云。善導云く「千が中に一もなし」等云云。いづれを信ずべしや。又云く　「日蓮が見る程の経論を善導・法然上人は御覧なかりけるか」と申すか。若しこの難のごとくならば、先の人の謬(あやま)りをば後の人のいかにあら(顕)わすとも用ふべからざるか。若し爾(しか)らば、なんぞ善導。

121　弘安初期、1紙、第4紙12行、

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2517～2518) 縮続161

＊創価学会新版・平成校定「破信堕悪御書(はしんだあくごしょ)」

(創新448・P2164、校2-474・P2060、全P1303、新P1674)

＊本文

かたき（敵）はをを(多)く、かたき(敵)はつよ(強)く、かたうど（方人）はこわくしてま(負)け候へば、悪心をを(起)こして、かへて法華経の信心をやぶ(破)り、悪道にを(堕)ち候なり。あ(悪)しきところをば、ついしさ(退)りてあるべし。

釈迦仏は三十二相そな(具)わて、身は金色(こんじき)、面(おもて)は満月のごとし。しかれども、或は悪人はすみ（炭）とみ(見)る、或悪人ははい（灰）とみる、或悪人はかたき(敵)とみる。

122　弘安　3行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2518)

校196・P2707

123　弘安　2行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2518)

校197・P2708

124　建治　3行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2518)

校198・P2708

125　文永末　2行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(P2518)

校199・P2708

126　文永末　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2519)

校201・P2710

127　文永　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2519)

校193・P2706

128　文永　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2519)

校192・P2706

129　文永　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2519)

校192・P2706

130　文永　2行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2519)

校92・P2658

縮二続122

131　建治末　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2520)

校191・P2705

132　建治末　1行

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2520)

校191・P2705

133　系年不詳　1紙

京都府京都市山科区御陵大岩　本圀寺蔵(定P2520)

「定2-247・P1341下山御消息」、「校2-267・P1383下山御消息」、「全・下山御消息」(全P343)の断片

異称「縮続164・野兎御書」

134　弘安　7行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2520)

校219・P2717

135　建治　6行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2521)

校216・P2715

136　文永・建治　4行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2521)

校212・P2714

137　文永末　3行半

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2521)

校207・P2712

138　弘安　3行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2522)

校220・P2717

139　文永末　2行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2522)

校213・P2714

140　建治　1行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2522)

校218・P2716

141　建治　2行

京都府京都市上京区新町通鞍馬口下ル下清蔵口町　妙覚寺蔵(定P2522)

校214・P2715

142　弘安　1行