日蓮について

 

日蓮の仏法とは

日蓮は、鎌倉時代に活躍した人物です。

当時は阿弥陀如来、薬師如来、大日如来、観音菩薩等への信仰が隆盛していましたが、そのような仏教界の中にあって、日蓮の教えは法華経の教主釈尊への原点回帰と法華経最第一の主張、唱題成仏の法門に、その特徴があるといえます。

 

特に日蓮は、妙法蓮華経如来寿量品第十六に登場する久遠実成の釈尊=久遠の本仏=永遠の本仏を尊び信じて、立教当初から晩年に至るまで、根本の仏たる久遠の本仏に還り、尊信することを教示しています。

 

しかしながら、一方では独創的な文字曼荼羅、十界曼荼羅を法華経の虚空会の相を以て顕し、特に中央に法華経の肝心にして成仏得道の題目たる南無妙法蓮華経と人々を導く導師・日蓮を大書配列し、さらに「仏滅度後二千二百三十余年之間一閻浮提之内未曽有大曼荼羅也」と全世界で未曾有の曼荼羅と意義付け、「大本尊」(万年救護本尊讃文)として皆が拝する曼荼羅本尊であることを示し、それを「一念三千を識らざる者には仏大慈悲を起こし、五字の内に此の珠を裹(つつ)み、末代幼稚の頸に懸けさしめたまふ」(観心本尊抄)と仏が授与するとしながら日蓮自身が授与していることから、「日蓮は教導面では立教から晩年に至るまで久遠の本仏直参信仰の導師であったが、文永8年の法難以降、御本尊を顕し始めた頃からは、その内面世界には久遠の本仏の体現者、即ち末法の教主としての自覚が横溢していた」といえるでしょう。

 

 

日蓮は「一閻浮提第一の本尊」(観心本尊抄)を顕す「一閻浮提第一の聖人」(聖人知三世事)であると自称しており、彼の宗教的確信とその人間的魅力は鎌倉仏教という枠と概念を超えて、現代に至るまで多くの人々の人生、生き方に「仏法の慈悲と智慧」による大きな示唆、影響、信仰による利益を与えているといえます。

 

日蓮の主な教えや活動

*法華経の大切さ

法華経が仏教の最も優れた経典であるとして法華経最第一を主張し、その教えを弘めるために身命を惜しみませんでした。

 

*題目

「南無妙法蓮華経」という題目を唱えることにより、どんな人も成仏できるという唱題成仏の法門を説きました。同時に、唱題することにより、久遠実成の釈尊=永遠の仏=久遠の本仏への信仰を深め、それは自らの仏性開花にもつながると説いています。

 

*自然災害、社会事象と仏法

日蓮は当時の仏教界に様々な問題があるとして、天災地変や疫病、飢饉や戦乱などにより苦しむ人々を救うために、一切経を習い極めて独自の法門・仏法を展開しました。

 

*立正安国論、政治と宗教

立正安国論は日本の国難を救い、一切衆生皆成仏道のためには法華経の正しい教えを信仰し、弘めることが必要だと説いた国主への諌暁書です。

現代では一国の主権は国民の手にあり、立正安国を主張し、受容する主体者は国民一人一人であるといえるでしょう。

 

*迫害

鎌倉幕府関係者へ法華経信仰・妙法受持を勧奨し、その近くにいた極楽寺良観等の仏教僧を自らの法門を基に批判したため、多くの迫害を受けました。

鎌倉草庵の襲撃、伊豆配流や安房の国東条松原での襲撃、文永8年の日蓮一門弾圧、竜口での斬首寸前、続く佐渡配流などであり、「大事の難四度なり」(開目抄)と日蓮は記しています。

 

*日蓮仏法=日蓮の法門と現代の実践

その教えの骨格は法華経最第一であり、「南無妙法蓮華経」という題目を御本尊に向かい唱えることにより誰でも成仏できる、即ち自己の真実に目覚めると説きました。

 

自己の真実とは、一つには人間として生まれてきた自己の使命、人生の目的を覚知するともいえるでしょう。

もちろん十人十色とあるように、どんな人にもその人にしかできない尊いこと、大切なこと、素晴らしいことがあり、仏法では人としてのより良き生き方は自他共の幸福を願う菩薩道にあると説いています。

 

妙法を唱えるうちに、我が事のみでいっぱいであった自分が気がつけば他者の幸福を願える境涯にまでなっており、そのこと自体が仏法の「菩薩道の実践」ではないでしょうか。

また、小我を乗り越えて大いなる使命に生きる自己への大成ともいえ、ここに「より善く、より心豊かに生きる、人としての道」があるように思います。

 

 

日蓮の生涯と現代、そして未来

宗教的信念を確固と持ち強く生き抜いた日蓮の生涯は、その進む速さに対して強力な逆風が吹き荒れるという波乱に満ちたものとなり、彼の行動は多くの信奉者だけでなく、多くの反対者も生み出しました。

 

信と疑、法性と無明、光と闇、正道と邪道、確信と懐疑、この対極的な闘いは日蓮の時代から現代まで続いており、未来もまた変わらないのかもしれません。

 

しかし、日蓮の教えは彼の亡き後640余年の時を経て、和合僧の出現により一閻浮提(全世界)にまで弘まり、特に日本国においては和合僧の支援する政党が与党として国政を動かすまでの展開になっていることは、日蓮が待望した「立正安国の原型」であるといえるように思います。

 

また、『妙法を唱える人々が一国の動向を決するだけの勢力となることが広宣流布であると解釈できる「撰時抄」の教示』を踏まえれば、「今は広宣流布の時である」との理解が成り立つのかもしれません。

 

ともあれ法然浄土教に対するように創唱された日蓮の法門は、日蓮法華教ともいえる初期の展開より拡大発展し、現代では日蓮が表現した「日本の仏法」(諫暁八幡抄)から昇華した、「一閻浮提第一の仏法」「世界の仏法」であるといえるのではないでしょうか。

 

「撰時抄」

 

この念仏と申すは、双観経・観経・阿弥陀経の題名なり。権大乗経の題目の広宣流布するは、実大乗経の題目の流布せんずる序にあらずや。心あらん人は、これをすいしぬべし。権経流布せば実経流布すべし。権経の題目流布せば、実経の題目また流布すべし。

 

2024.8.3